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釣り紀行

<山岳同好会五月例会釣り山行>

【京都府歯科医師会会報掲載】

昨年に続き、福井県日野川源流域、夜叉が池、広野ダム展望台にベースキャンプを張り、

釣り山行をすることとなった。

17日土曜、午後組は1時半頃めいめいに出発したが、JR今庄駅を過ぎた辺りで

申し合わせたように4台の車が合流、目的地に向かった。

昨年より水量が多い日野川沿い、次から次へと湧き出るようにあふれ流れる川の流は、

これから始まる時の夢を大きく膨らませた。

展望台へ続く小さな坂道を登りつめるとそこが目的地だ。

今年の豪雪により岩谷川の側道は通行止めとなっていた。

1年ぶりのメンバー再会の挨拶を交わしていると、程なく通行止めの向こうから自信満々、唯一朝組みとなった私の釣り師匠の凱旋となる。

約3時間が過ぎた頃、師匠は11人分の食料を持ち帰る。

アマゴ1尾を含む17尾、尺を越えるイワナを筆頭に、型ぞろいを皆に披露した。

私と釣り大師匠の2名は、負けじとダム下へと釣りに出かけたが、

結果・・・・・・・・

もはや釣り山行最大の楽しみとなった晩飯、我々のゴールデンタイムが始まった。

天空の料理人が揚げ る、たらの芽のてんぷらは人気抜群。今年も全く味は落ちていないどころか、

昨年よりいっそう美味しく感じる。こごみ・こしあぶら・わさび・みつば・ゆきのした・・と季節の味を楽しむ。

酒とともに話が盛り上がり、備長炭に熱せられた南部鉄の芋鍋は2回の楽しみを提供してくれた。

はじめは野菜風味、次は肉風味と、粋なもてなしである。

釣る楽しみ、食らう楽しみ、語らう楽しみ。

それらの主役はイワナの塩焼き。備長炭の遠火でじっくり焼かれ竹串にされた天然イワナ、

S字曲線の姿焼を大きな口でがぶり。

イワナの大きさといい、焼き具合といい、これまた最高である。

去年とは打って変わって天候にも恵まれ、上限の月を少し過ぎた月光が

我々を包み込むように照らし、夜は更けて行く。

翌18日、山の切れ目から白み始め満水の湖面をわたるそよ風は、

張りつめた空気を貫く小鳥のさえずりとコゲラのドラミング響き渡る音を運ぶ

すがすがしい朝となる。

孤独な釣り師は一人。

昨年の釣果があったポイントへでかけたが、小さなアタリが2回あっただけで無残な結果であった。

0尾と尺を含む17尾の違いは何か。未踏の源流域での17尾。イワナはいれば釣れる。

俗世間と同じく、この場においても需要と供給のバランスが崩れてしまった環境では、こういうものなのか。

これを自然破壊というのだろうか。

釣りの楽しみまでもを奪ってしまう。

Catch & Relese、Catch & Eat の意見の分かれるところであるが、捕まえた魚を逃がしてやるのはゲーム性が強い。

我々は、苦労して捕まえた獲物を無駄なく料理し、残さず食べる。これこそ「食」の原点だと思う。

竿をたたみ戻り始めると、山菜取り組みとすれ違った。ワサビを探しているらしい。

指示された2筋目の沢の群生?

山菜採りも慣れないとなかなか難しいらしく、かたちの良く似た葉に惑わされるようだ。

再度、名人のガイドで出直し、ようやく立派なワサビを手にしニコニコ顔。

イワナの塩焼きが入ったみそ汁は、最高の朝飯であった。

数々の山を性はしてきたアルピニストも、今回は愛用のカメラ片手にお散歩。

少し気温が上がり始め、蝶が舞う時間になると、昆虫採取の網を手に、ミヤマカラスアゲハウスジロチョウを捕えご満悦の者もいる。

迎え酒をする者もいる。

誰もが至福のときを過ごしたようだ。

来る前よりも綺麗に後片付けを済ませ、今庄駅で名物そばを昼食とし、現地解散となった。

加藤 一行             

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